島根県美郷町が新商品を発表、試食会も開催

島根県美郷町は島根県中部に位置する自治体で、イノシシ肉「おおち山くじら」のブランドでも知られている。捕獲されるのはイノシシが大半だったが、近年シカの個体数の増加が懸念されることを背景に、シカ肉を使った新たな商品「美郷もみじ『せんじ肉』」を開発、8月27日に試食会・発表会を開催した。

島根県美郷町は、ジビエ事業、鳥獣被害対策を、まちづくり、地域振興の一部として取り組んでいる全国的にも稀な自治体である。

同町美郷バレー課の安田亮氏は、
「獣害を獣害としてだけ捉えるのではなく、環境問題、人口減少問題といった地域の問題として捉えること。ジビエも単なる特産品として扱うのではなく、いろいろな人を巻き込んでいくアイテムにしていくという視点が重要ではないか」
と話す。

鳥獣被害対策、ジビエ事業は、単発で近視眼的に取り組んでいるだけでは先がない。実際、無作為に取り組むだけでは予算を消費するだけに終わり、特にジビエ事業は予算がなくなれば終了、ということが全国各地で繰り返されてきた。美郷町では、25年かけてまちづくり、地域活性化の中に鳥獣被害対策・ジビエ事業をプロットし、地域交流、産業基盤整備といった地域活性化のプログラムの中に組み込んできた。それが「美郷バレー構想」であり、その成果のひとつが「おおち山くじら」だ。

目的は「ジビエ振興」ではなく、あくまでも地域振興、地域活性化。そのキーアイテムのひとつとしてジビエを使うという視点である。ジビエ振興を主とする事業者は、結果として地域に活性化をもたらすと考える。ちょっとした違いのように見えるかもしれないが、まるっきりの逆なのだ。

「美郷もみじ『せんじ肉』」も、その視点で3年前から準備され、今回の発表となった。美郷バレーのシカの取り組みとしては第7弾という位置づけ。

美郷町で捕獲される個体の8割がイノシシ、シカは2割程度にとどまる。しかし、安田氏ら町の調査によるとシカの個体数は「急に」「爆発的に」増えることが分かっているという。近年広島県でシカの被害が増加していることを鑑み、「将来シカが増えたときに備え、今のうちに出口戦略もふくめた産業化の体制を構築したいと考えた」と安田氏は話す。

「せんじ肉」とは広島県で有名なB級グルメ、珍味。「せんじがら」ともいう。揚げた豚のホルモンを干して塩で味付けしたもので、酒のおつまみなどで好んで食べられる。これをシカ肉で作ったものが今回のせんじ肉だ。

美郷町が都市交流で広島県広島市西区己斐との付き合いがあり、己斐内の飲食店とも交流を深めてきた。おおち山くじらの販売などでも実績がある。その交流の中で、広島のせんじがらを美郷のシカ肉でできないかというアイデアが持ち上がり、開発が始まったという。事業主体は美郷バレー構想のメンバーであるタイガー(株)。製造は西区己斐の精肉店にOEMで委託している。

試食会ではゲストとして出席した嘉戸隆町長、商工会長、観光協会長、濁酒蔵元邑川の田邊代表がせんじ肉を試食。いずれも高い評価を与えていた。

西区己斐の飲食店、美郷町内の飲食店での利用を見込む。美郷町の名産のどぶろくとの相性も良く、観光でも活用したい考えだ。試食会の翌日から広島県内から多くの問い合わせもあったという。10月2~4日に開催される『美郷バレー・山くじらフォーラム」の2日目でも発表、紹介される予定。

美郷バレー”ピンチをチャンスに、新たな魅力に”産官学民でシカの問題を逆手に取った第7弾 シカ肉・美郷もみじ「せんじ肉」の特産品発表について
https://gov.town.shimane-misato.lg.jp/information/information01/6940

美郷もみじ「せんじ肉」誕生!
https://shimanemisato-town.note.jp/n/n5fd4503f9bef?magazine_key=m92ce8215ce8b